森の雑記

本・映画・音楽の感想

2020-08-01から1ヶ月間の記事一覧

いちばんやさしい美術鑑賞

いちばんやさしい美術鑑賞 はじめに 先日、国立西洋美術館の「ロンドンナショナルギャラリー展」に行った。「ひまわり」を含む日本初公開の絵画たちを目の当たりにし、とても感動した。だがそれと同時に、「もっと楽しみたい」という欲求が生まれた。僕は芸…

装丁物語

装丁物語 はじめに 本は美しいものであって欲しい。初めて星新一のショートショートを手に取った時の感動は今も忘れられないし、森見登美彦の「夜は短し歩けよ乙女」を目にした時のワクワクはまるで昨日のことのように感じられる。前者は真っ白な表紙に描か…

ANAとJALこんな違いがあったのか

ANAとJAL こんな違いがあったのか はじめに 感染症の流行で航空業界は壊滅的とも言える打撃を受けた。Gotoを利用して旅行しようとする人はまだまだ少数派だし、航空業界を目指す友人は途中で採用が中止された。エアラインはまさに窮地に立たされていると言っ…

PEOPLE1 「常夜燈」

PEOPLE1「常夜燈」 はじめに 先日の夜はなかなか寝付けなかった。そんな時は漫画を読むに限る。そういうわけでもう何度目か忘れたが、「チェンソーマン」を一気読みした。最新話の鬱展開もさることながら、やはりこの作品は恐ろしい。 読み終わり、まあ音楽…

四畳半タイムマシンブルース

四畳半タイムマシンブルース はじめに 「タイムマシン」それは洋の東西を問わずそこかしこに出てくる、時空を移動するためのツールだ。誰だって戻りたい過去があるし、覗いてみたい未来がある。人類共通の願いを叶えるこの機械は、多くの物語で主要なモチー…

『古事記』神話の謎を解く かくされた裏面

『古事記』神話の謎を解く かくされた裏面 はじめに この間書いたように、僕は日本の神話が大好きである highcolorman.hatenablog.jp 古事記はそもそもストーリーが面白い上に、その成立背景に多くの・複雑な事情を抱えているところが良い。「みんなが知って…

南方熊楠と説話学

南方熊楠と説話学 はじめに 文庫、新書、ハードカバー、雑誌…本には様々な種類がある。その中でお勧めしたいのが「ブックレット」だ。厳密に定義するのは難しいが、ここでは文庫本よりは大きく、100pくらいのサイズで事実を書いた本を指すことにする。 国内…

初めの一歩は絵で学ぶ 微生物学

初めの一歩は絵で学ぶ 微生物学 はじめに 高校の頃生物の授業が好きだった。高校の頃「生物」のテストで、1位の座を死守し続けたぐらい好きだった。文系なのに。「生物基礎」では物足りなかった。実際に生き物と触れ合うのは苦手だけれど、教科書に登場する…

新しい文章力の教室

新しい文章力の教室 はじめに はてなブログを書き始めてから4ヶ月が経った。これまでに70本以上の投稿をして、各記事の文字数はだいたい1500〜2000文字だ。それなりにたくさんの文章を、それなりに長い分量で書いてみて気になったのは、この文章は「きちんと…

絵解きの愉しみ 説話画を読む

絵解きの愉しみ 説話画を読む はじめに 「エトキ」という言葉をご存知だろうか。新聞などで図や写真、イラストに添えられるキャプション的説明文句のことである。おそらくこの言葉は、かつて説話画等々を観賞する方式であった「絵解」=口頭での内容説明から…

とんかつのあけぼの

とんかつのあけぼの カツ丼を食べた話です。 僕はカツ丼が大好きである。甘くて風味のある卵でとじられたカツ、その出汁を浴びて狐色に輝く玉ねぎ、卵・カツ・玉ねぎの三層で閉じ込められ温かいままのご飯、どれもたまらなく好きである。 カツ丼に目覚めたの…

どうせカラダが目当てでしょ

どうせカラダが目当てでしょ はじめに 新しく読むエッセイを探していたところ、衝撃的なタイトルが目に飛び込んできた。「どうせカラダが目当てでしょ」は、王谷晶著、河出書房新社発行の一冊だ。河出書房と言えば、先日ここでも書いた最果タヒ著「きみの言…

日本の近代とは何であったか

日本の近代とは何であったか 問題史的考察 はじめに 岩波新書、三谷太一郎著「日本の近代とは何であったか−問題史的考察」を読んだ。先日友人にこの本を借りてから寝かせることひと月半、ようやく重い腰が上がった。面白そうだと思って借りたはいいものの、…

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

アンドロイドは電気羊の夢を見るか? はじめに 高校生の頃、よく市立図書館で勉強をしていた。学習専用のスペースもあるそこは、塾に通わない僕みたいな受験生にはうってつけの場所だった。だってとても静かだし。けれど、そんな市立図書館にも1つ欠点がある…

違和感たち

違和感たち 生きていて「ん?」って思うこと、ありますよね。 ① 北海道「県」 毎回動画のアップを楽しみにしているユーチューバーがいる。ある日、彼女は「質問回答」の動画をあげた。ネタ切れのユーチューバーがよくやると噂のあれだ。 その動画の中には「…

千年後の百人一首

千年後の百人一首 はじめに 小学生4年生の頃、僕のクラスでは毎朝百人一首が行われていた。全100首が20首ずつ5色に分けられた五色百人一首が使われていて、今月は赤色、来月は緑色といった風に月ごとで扱われる札が変わっていく。このルールのもと、生徒はリ…

幸福とは何か 思考実験で学ぶ倫理学入門

幸福とは何か 思考実験で学ぶ倫理学入門 はじめに あなたはトロッコ路線切り替えの作業員である。線路の上を猛スピードでトロッコが走っており、あるポイントで線路は二股に分かれる。そんな時、片方の線路では作業員が線路を修復する作業をしていた。このま…