森の雑記

本・映画・音楽の感想

新書

新作落語の舞台裏

新作落語の舞台裏 はじめに 落語を生で聞いたことはほとんどない。中学時代、毎年の「古典芸能鑑賞日」で落語が対象になった会もあるが、大変失礼ながらほとんど睡眠に費やしたくらいである。落語とは縁のない生活を送ってきた。 だが最近、YouTubeで立川談…

はじめての投資信託

始めての投資信託 はじめに 高校時代に株式の勉強をしてから、ずっと投資に興味があった。教えてくれた先生もなるべく早く始めることを勧めてくれていた。けれど、部活、勉強、飲み会、、学生らしさを満喫するうちに、投資のことは頭の隅に追いやっていた。 …

メディア論の名著30

メディア論の名著30 はじめに たくさんの本との出会いをもたらす本がある。和田誠「装丁物語」、筒井康隆「短編小説講義」、「岩波新書解説総目録」、こうした類の本を読めば僕たちはまた新しい本を知ることができる。友人に知人を紹介してもらうような感じ…

メディアが動かすアメリカ

メディアが動かすアメリカ 民主主義とジャーナリズム はじめに 連邦議会をトランプ大統領の支持者が占拠する未曾有の事件が起こった。この事件には死者も出てしまった。大統領はこの過激な行為を煽ったとしてツイッターなどのアカウントを停止された。まさに…

名文どろぼう

名文どろぼう はじめに 以前竹内政明さんの「編集手帳傑作選」を読んだ。笑える文章から大切に取っておきたくなる文章まで、バリエーション豊かなコラムが揃っていた。さすがは傑作選。そんな竹内さんの別著に「名文どろぼう」(文春新書)がある。新聞のコ…

国債がわかる本

国債がわかる本 はじめに 「国債ってなに?」と聞かれると、ドキッとする。「国の借金」であること、日銀の「買い・売りオペ」の話、「マイナス金利」の意味、このような抽象的かつ断片的な知識は披露できるものの、それがどのような実態を持っていて、メリ…

マキァヴェッリ 『君主論』をよむ

マキァヴェッリ『君主論』をよむ はじめに 「君主論」とか「マキアベリズム」の言葉には何やら邪悪なイメージがつきまとう。マキアヴェッリが書いたのは、権謀や残酷を用いる恐ろしくリアリスティックな帝王論、そんな風に思っている人は多いはずだ。 世界史…

自民党 価値とリスクのマトリクス

自民党 価値とリスクのマトリクス はじめに 中田敦彦のYouTube大学で紹介されているのを見てから気になっていた、中島岳志著「自民党 価値とリスクのマトリクス」(スタンダードブックス)を読んだ。 全体をみて 安倍前首相の辞任後、菅政権が発足してから読…

マンガ認知症

マンガ 認知症 はじめに 今の日本は超高齢社会である。2007年に高齢化率は20%を超え、もはや社会の高齢化は恐れて対処するものではなく、現実として向き合い、付き合っていくものになった。介護や認知症、自動車事故など高齢者にまつわる多岐にわたる論点は…

新聞報道と顔写真

新聞報道と顔写真 写真のウソとマコト はじめに 新聞には写真がつきものである。モノクロだったり、カラーだったり、トリミングされていたりとその掲載方法はまちまちであるものの、紙面を彩るという意味で写真は大きな役割を果たしている。最近はQRコードを…

発想の整理学

発想の整理学 AIに負けない思考法 はじめに 故外山滋比古先生が書いた「思考の整理学」のパクリと見紛うようなタイトル、さらに「AIに負けない」といかにも最近ありがちなサブタイトルを備えたこの本を見て、少し嫌な気持ちがしたのは事実である。でもまあ外…

スルメを見てイカがわかるか!

スルメを見てイカがわかるか! はじめに 先日帰省したときに、養老孟司・茂木健一郎著「スルメを見てイカがわかるか!」(角川書店)を実家の本棚から拝借した。タイトルに惹かれて高校生だか中学生だかの頃に1度読もうとしたのだが、内容が全然頭に入ってこ…

短編小説講義

短編小説講義 増補版 はじめに 筒井康隆といえば、星新一、小松左京と並ぶ日本SF御三家の1人である。彼が原作を書いた映画「パプリカ」は独特な映像が気になる代物で、いつか観ようと思っている。ネットフリックスのマイリストに入りっぱなしであるが。 そん…

財務官僚の出世と人事

財務官僚の出世と人事 はじめに 「財務省にあらずんば」「東大法学部にあらずんば」こんな言葉がまことしやかにささやかれる、官僚の世界。言葉の真偽はさておき、中央省庁では日本きってのエリートたちが日々切磋琢磨していることに間違いはないだろう。中…

日本語作文術

日本語作文術 伝わる文章を書くために はじめに 何度も記事を書いていると、定期的に「文章術」系の本を読みたくなる。それはもちろん文章力を向上させるためである。だが一方で、内容をみて「当たり前だなあ」と思う部分が多ければ、自分の成長も実感できる…

日本人のひるめし

日本人のひるめし はじめに 「1日3食」は誰にとっても自明な食事習慣である。これには反論もあるだろう。「朝食は食べられないんですよね、」だがこれも、あくまで3食を基準にした上で「1食少ない」意識から来ている意見だ。やはり現代の僕らは食に関して、…

脳は、なぜあなたをだますのか

脳は、なぜあなたをだますのか はじめに 僕らは絶えず意思決定をして生きている。夕飯のメニューとか、デートの服装とか、今日読む本とか。生きることは主体的な選択の連続である。 と思うだろう。 妹尾武治著「脳はなぜ、あなたをだますのか」(ちくま新書…

希望の政治

希望の政治 都民ファーストの会講義録 はじめに 小池都知事が再選を決め、任期を伸ばしたのが3ヶ月前。圧倒的な露出度、親しみやすさをもって余裕のある勝利を果たしたように見える。公約の達成度合いやコロナ禍対応など、もちろん課題は残るところだが、盤…

記者は何を見たのか

記者は何を見たのか 3.11東日本大震災 東日本大震災が起こったとき、僕は小学校6年生、卒業式練習の真っ最中だった。震源からはそれなりに離れた県に住んでいたので、揺れはそう大きくなかった。加えて僕が住んでいた場所は、そもそも自身が起こりやすい地域…

藤原道長の日常生活

藤原道長の日常生活 はじめに 「この世をば我が世とぞ思ふ望月の欠けたることもなしと思へば」 かの藤原道長が千年前に詠んだ和歌は、彼の尊大なイメージとともに多くの日本人が知るところとなった。歴史や古典の授業で彼の名前を聞かないことはないし、「大…

憲法という希望

憲法という希望 はじめに この間塾で公民の授業をしていると、テキストに「集団的自衛権」についての記述を見つけた。少し複雑な概念なので、重要な理由も含めてきちんと教えようとしたら、ついつい喋りすぎた。大学で憲法を勉強したからと言って、公民系の…

日本の妖怪

日本の妖怪 はじめに 「妖怪ウォッチ」が爆発的に流行ったことがあった。ポケモンにも言えることだが、やっぱり日本にはキャラものがウケる土壌があるんだと思う。その原点はもしかしたら江戸時代の妖怪ブームまで遡れるかもしれない。 民俗学の本を読んでい…

いちばんやさしい美術鑑賞

いちばんやさしい美術鑑賞 はじめに 先日、国立西洋美術館の「ロンドンナショナルギャラリー展」に行った。「ひまわり」を含む日本初公開の絵画たちを目の当たりにし、とても感動した。だがそれと同時に、「もっと楽しみたい」という欲求が生まれた。僕は芸…

ANAとJALこんな違いがあったのか

ANAとJAL こんな違いがあったのか はじめに 感染症の流行で航空業界は壊滅的とも言える打撃を受けた。Gotoを利用して旅行しようとする人はまだまだ少数派だし、航空業界を目指す友人は途中で採用が中止された。エアラインはまさに窮地に立たされていると言っ…

『古事記』神話の謎を解く かくされた裏面

『古事記』神話の謎を解く かくされた裏面 はじめに この間書いたように、僕は日本の神話が大好きである highcolorman.hatenablog.jp 古事記はそもそもストーリーが面白い上に、その成立背景に多くの・複雑な事情を抱えているところが良い。「みんなが知って…

南方熊楠と説話学

南方熊楠と説話学 はじめに 文庫、新書、ハードカバー、雑誌…本には様々な種類がある。その中でお勧めしたいのが「ブックレット」だ。厳密に定義するのは難しいが、ここでは文庫本よりは大きく、100pくらいのサイズで事実を書いた本を指すことにする。 国内…

日本の近代とは何であったか

日本の近代とは何であったか 問題史的考察 はじめに 岩波新書、三谷太一郎著「日本の近代とは何であったか−問題史的考察」を読んだ。先日友人にこの本を借りてから寝かせることひと月半、ようやく重い腰が上がった。面白そうだと思って借りたはいいものの、…

幸福とは何か 思考実験で学ぶ倫理学入門

幸福とは何か 思考実験で学ぶ倫理学入門 はじめに あなたはトロッコ路線切り替えの作業員である。線路の上を猛スピードでトロッコが走っており、あるポイントで線路は二股に分かれる。そんな時、片方の線路では作業員が線路を修復する作業をしていた。このま…

医者とはどういう職業か

医者とはどういう職業か はじめに 先日読んだ「医者と患者のコミュニケーション論」の著者、里見清一先生が幻冬舎から出版された、「医者とはどういう職業か」。前者に勝るとも劣らぬ良書であった。 どんな本にも言えることだが、やっぱり同じひとが書いた別…

アマテラスの誕生 古代王権の源流を探る

アマテラスの誕生 古代王権の源流を探る はじめに 民俗学の本について書いた前回に引き続き、今回は神話の本。こういう記事が連続するとなんだか怪しく思われる方もいるかもしれないが、好きなんです、神話とか伝承とか。 初めて古事記を読んだのは、確か中…