森の雑記

本・映画・音楽の感想

新書

発想の整理学

発想の整理学 AIに負けない思考法 はじめに 故外山滋比古先生が書いた「思考の整理学」のパクリと見紛うようなタイトル、さらに「AIに負けない」といかにも最近ありがちなサブタイトルを備えたこの本を見て、少し嫌な気持ちがしたのは事実である。でもまあ外…

スルメを見てイカがわかるか!

スルメを見てイカがわかるか! はじめに 先日帰省したときに、養老孟司・茂木健一郎著「スルメを見てイカがわかるか!」(角川書店)を実家の本棚から拝借した。タイトルに惹かれて高校生だか中学生だかの頃に1度読もうとしたのだが、内容が全然頭に入ってこ…

短編小説講義

短編小説講義 増補版 はじめに 筒井康隆といえば、星新一、小松左京と並ぶ日本SF御三家の1人である。彼が原作を書いた映画「パプリカ」は独特な映像が気になる代物で、いつか観ようと思っている。ネットフリックスのマイリストに入りっぱなしであるが。 そん…

財務官僚の出世と人事

財務官僚の出世と人事 はじめに 「財務省にあらずんば」「東大法学部にあらずんば」こんな言葉がまことしやかにささやかれる、官僚の世界。言葉の真偽はさておき、中央省庁では日本きってのエリートたちが日々切磋琢磨していることに間違いはないだろう。中…

日本語作文術

日本語作文術 伝わる文章を書くために はじめに 何度も記事を書いていると、定期的に「文章術」系の本を読みたくなる。それはもちろん文章力を向上させるためである。だが一方で、内容をみて「当たり前だなあ」と思う部分が多ければ、自分の成長も実感できる…

日本人のひるめし

日本人のひるめし はじめに 「1日3食」は誰にとっても自明な食事習慣である。これには反論もあるだろう。「朝食は食べられないんですよね、」だがこれも、あくまで3食を基準にした上で「1食少ない」意識から来ている意見だ。やはり現代の僕らは食に関して、…

脳は、なぜあなたをだますのか

脳は、なぜあなたをだますのか はじめに 僕らは絶えず意思決定をして生きている。夕飯のメニューとか、デートの服装とか、今日読む本とか。生きることは主体的な選択の連続である。 と思うだろう。 妹尾武治著「脳はなぜ、あなたをだますのか」(ちくま新書…

希望の政治

希望の政治 都民ファーストの会講義録 はじめに 小池都知事が再選を決め、任期を伸ばしたのが3ヶ月前。圧倒的な露出度、親しみやすさをもって余裕のある勝利を果たしたように見える。公約の達成度合いやコロナ禍対応など、もちろん課題は残るところだが、盤…

記者は何を見たのか

記者は何を見たのか 3.11東日本大震災 東日本大震災が起こったとき、僕は小学校6年生、卒業式練習の真っ最中だった。震源からはそれなりに離れた県に住んでいたので、揺れはそう大きくなかった。加えて僕が住んでいた場所は、そもそも自身が起こりやすい地域…

藤原道長の日常生活

藤原道長の日常生活 はじめに 「この世をば我が世とぞ思ふ望月の欠けたることもなしと思へば」 かの藤原道長が千年前に詠んだ和歌は、彼の尊大なイメージとともに多くの日本人が知るところとなった。歴史や古典の授業で彼の名前を聞かないことはないし、「大…

憲法という希望

憲法という希望 はじめに この間塾で公民の授業をしていると、テキストに「集団的自衛権」についての記述を見つけた。少し複雑な概念なので、重要な理由も含めてきちんと教えようとしたら、ついつい喋りすぎた。大学で憲法を勉強したからと言って、公民系の…

日本の妖怪

日本の妖怪 はじめに 「妖怪ウォッチ」が爆発的に流行ったことがあった。ポケモンにも言えることだが、やっぱり日本にはキャラものがウケる土壌があるんだと思う。その原点はもしかしたら江戸時代の妖怪ブームまで遡れるかもしれない。 民俗学の本を読んでい…

いちばんやさしい美術鑑賞

いちばんやさしい美術鑑賞 はじめに 先日、国立西洋美術館の「ロンドンナショナルギャラリー展」に行った。「ひまわり」を含む日本初公開の絵画たちを目の当たりにし、とても感動した。だがそれと同時に、「もっと楽しみたい」という欲求が生まれた。僕は芸…

ANAとJALこんな違いがあったのか

ANAとJAL こんな違いがあったのか はじめに 感染症の流行で航空業界は壊滅的とも言える打撃を受けた。Gotoを利用して旅行しようとする人はまだまだ少数派だし、航空業界を目指す友人は途中で採用が中止された。エアラインはまさに窮地に立たされていると言っ…

『古事記』神話の謎を解く かくされた裏面

『古事記』神話の謎を解く かくされた裏面 はじめに この間書いたように、僕は日本の神話が大好きである highcolorman.hatenablog.jp 古事記はそもそもストーリーが面白い上に、その成立背景に多くの・複雑な事情を抱えているところが良い。「みんなが知って…

南方熊楠と説話学

南方熊楠と説話学 はじめに 文庫、新書、ハードカバー、雑誌…本には様々な種類がある。その中でお勧めしたいのが「ブックレット」だ。厳密に定義するのは難しいが、ここでは文庫本よりは大きく、100pくらいのサイズで事実を書いた本を指すことにする。 国内…

日本の近代とは何であったか

日本の近代とは何であったか 問題史的考察 はじめに 岩波新書、三谷太一郎著「日本の近代とは何であったか−問題史的考察」を読んだ。先日友人にこの本を借りてから寝かせることひと月半、ようやく重い腰が上がった。面白そうだと思って借りたはいいものの、…

幸福とは何か 思考実験で学ぶ倫理学入門

幸福とは何か 思考実験で学ぶ倫理学入門 はじめに あなたはトロッコ路線切り替えの作業員である。線路の上を猛スピードでトロッコが走っており、あるポイントで線路は二股に分かれる。そんな時、片方の線路では作業員が線路を修復する作業をしていた。このま…

医者とはどういう職業か

医者とはどういう職業か はじめに 先日読んだ「医者と患者のコミュニケーション論」の著者、里見清一先生が幻冬舎から出版された、「医者とはどういう職業か」。前者に勝るとも劣らぬ良書であった。 どんな本にも言えることだが、やっぱり同じひとが書いた別…

アマテラスの誕生 古代王権の源流を探る

アマテラスの誕生 古代王権の源流を探る はじめに 民俗学の本について書いた前回に引き続き、今回は神話の本。こういう記事が連続するとなんだか怪しく思われる方もいるかもしれないが、好きなんです、神話とか伝承とか。 初めて古事記を読んだのは、確か中…

南方熊楠 人魚の話

南方熊楠 人魚の話 はじめに 南方熊楠をご存知だろうか。高校倫理や日本史の授業で彼を知った人も多いかもしれない。僕も高校時代に倫理の授業で彼についてほんの少し勉強した。神社合祀に反対したこと、粘菌に詳しい民族学者だったこと、昭和天皇に標本を手…

『広辞苑』をよむ

『広辞苑』をよむ はじめに 中学校3年生のときに電子辞書を買ってもらった。この小さな機械はなかなかの優れものである。英和辞典はもちろん、世界史の一問一答、TOEIC模擬テストなど、実に多くのテキストが内蔵されており、一台持っていれば大抵の学習はで…

新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方

新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方 はじめに 先日「AI時代の憲法論」を読んだ際に初めて知った佐藤優さんと、お馴染み池上彰さんの対談を文春新書から発行したのが本書。発行は「新・戦争論」「AI時代の憲法論」の順だが、僕は時系列に逆らう形で本…

医者と患者のコミュニケーション論

医者と患者のコミュニケーション論 はじめに 人間はコミュニケーション能力を求めている。就職活動の面接、友達作り、飲み会…多くの場面で円滑にコミュニケーションが行えれば、人間関係は良好になる可能性が高いからである。そのせいだろうか、巷にはコミュ…

新 移民時代

新 移民時代 はじめに 北朝鮮が2018年に設置された南北共同事務所を爆破し、カシミール地方では中印両軍の武力衝突により、少なくとも3人が命を落とした。新型コロナウイルスの流行も手伝ったのだろうか、国際的な秩序には、各地で明確な歪みが生じている。…

面白いけど笑えない中国の話

面白いけど笑えない中国の話 はじめに 武漢発と言われることの多い新型コロナウイルスが世界を席巻してから、もう半年がたとうとしている。感染拡大の責任を声高に追求する米国でなくとも、武漢だけでなく、中国全土の公衆衛生状況が危ういことは多くの国が…

男尊女卑という病 

男尊女卑という病 はじめに 「プラスサイズモデル」としてご活躍されている、藤井美穂さんをご存知だろうか。僕は初めて彼女の活動を知ったときに、自分に自信を持ち、自分らしさを表現し続ける生活を送る彼女を、心底尊敬した。世間が作る「理想」より自分…

サルが食いかけでエサを捨てる理由

サルが食いかけでエサを捨てる理由 ヒトと動物は異なるか はじめに タイトルを読むだけで果物を持ってさまようサルが想像できてしまう。ちくまプリマー新書から発行された本書は、同レーベルの他本と同様に「クラフト・エヴィング商會」が装幀を手掛けており…

日本人と象徴天皇 昭和から平成、令和へ

日本人と象徴天皇 昭和から平成、令和へ はじめに 天皇に関する言論には、しばしば大きな賛否がつきまとう。僕はその是非や制度の背景などに明るくないので、いまだ自らの立場を明確にできない。それでもこの制度、「象徴」天皇制について少しでも多くのこと…

世界は宗教で動いてる

世界は宗教で動いてる はじめに 自分が息をひきとる時を考えると、多くの日本人は同時にお葬式のことを思い浮かべるのではないだろうか。そして葬儀について、大多数の人が仏教式のお経やご焼香を伴うものを想像する。だが、その宗派は?と聞かれると、答え…