森の雑記

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新しい文章力の教室

新しい文章力の教室

 

はじめに

 はてなブログを書き始めてから4ヶ月が経った。これまでに70本以上の投稿をして、各記事の文字数はだいたい1500〜2000文字だ。それなりにたくさんの文章を、それなりに長い分量で書いてみて気になったのは、この文章は「きちんと」しているのか、ということだ。

 誰に学んだわけでもなく、添削をしてくれる人もなしに書き続けた文章のクオリティは、お世辞にも高いとは言えない。文章力向上のためにブログを始めた側面もあるのに、文章が上手くなった気もしない。

 そんな気分になったので、この辺りで「文章」についてイチから学ぼうと思い、唐木元著、インプレス発行「新しい文章力の教室」を読んでみた。

 

全体をみて

 著者はニュースサイト「ナタリー」の運営会社取締役である。その彼が社内で開いた勉強会のうち、文章力にまつわるパートを書籍化したのが本書だ。さすがというか、当然というか、「ナタリー」の人が書いた本というだけあり、内容は簡潔にして的確、有り体に言えばとても読みやすかった。当たり前のようなことも繰り返し強調されるけれど、それだけ基本は大切なのだろう。

 以下、5章からなる本書の各章について。

 

第1章 書く前に準備する

 「良い文章」の定義を「完読=全て読まれる」に設定してから、文章作成の下ごしらえを教えるところから、本書は始まる。唐木さんいわくこの準備さえきちんとできれば、文章は70点くらいまでにはなるそう。

 そんな準備の方法として、「主眼と骨子」「構造シート」2つのポイントが示される。

 前者のうち主眼は「その文章で何を言うか」、つまりテーマのことだ。これがない文章は当然、伝えたいことがはっきりとしない。一方、骨子は「何を」「どれから」「どのくらい」話すか、テーマ(目的地)に到達する方法、経路のことだ。読者をテーマまで円滑に運び届けるためには、この骨子がきちんと組まれないといけない。

 後者は「主眼と骨子」を可視化するために、唐木さんが考案したワークシートのようなものだ。箇条書きにされた「伝えたいこと」に順序や重要度を書き込み、文章を作るための設計図にする。

 

 僕もブログを書くときは似たようなプロットを走り書きしているので、この章にあることはよくわかる。設計図がなくては家が建たない。

 ただ、一つ胸に刺さったのは、2000字を超えるような文章なら、各パートごとに「構造シート」を作るべし、というアドバイス。ここではよく章ごとに感想を書くけれど、伝えたいことだけをプロットに記すのみで、章ごとのプロットは作ったことがなかった。

 

第2章 読み返して直す

 次のレクチャーは「推敲」について。重複、構造、見た目など、いくつかの観点から文章を直す方法を教えてくれる。

 この章は普段から意識していることが多かった。例えば「段落ごとの重複」。当ブログでは各パートおなじ構造で文章を書くことが多い。これは意図的にやっている面もあるけれど、読む側からすれば飽きが来る可能性もある。定番といえば聞こえはいいが、適度なブラッシュアップも必要だろう。

 それから漢字の「開き」「閉じ」。文章は、漢字を使いすぎると黒っぽい文章になって読むハードルが上がるし、少なければ白っぽくなって間の抜けた印象になる。おそらく僕が書く文章はえてして黒っぽくなりがちなので、適度に漢字を平仮名に「開く」ようにしたい。

 

第3章 もっと明快に

 「大人の書き手」になるべくよりソリッドな文章を作る方法を教える章。

 文章は自己顕示欲をみたす手段ではなく、人に物事を伝える手段だ。着飾った美文でも、読まれなくては意味がない。と、章の冒頭で唐木さんは言う。

 これには若干の異論はあるけれど、「仕事」として書く文章に限れば、この考えには大いに賛成したい。

 そんな「大人の書き手」になる方法で面白かったのが「点の表現と線の表現」についてのパート。時間にまつわる言葉には「点型」「線型」の2種類がある。例えば動詞「発売する」は時間軸上で単一の一点をさす言葉である。つまり点型。対し「販売する」は時間的な幅を持つ言葉であるから「線型」。このように2種類ある時間表現の言葉は、互いを混ぜないことが大切だそう。「8月15日から発売される」この文章は決して間違ってはいないけれど、読みにくさを与えうる。とはいえ、上記文の「から」は英語でいうsinceのことだろうから、現在完了的な「発売する」がセットで使われていてもさほど違和感はない気も。

 

第4章 もっとスムーズに

 文章のスピード感を調整するのは大切なことだ。簡潔すぎる文章はぶっきらぼうである。この章には、適度な速度で文章を読ませるためのノウハウが詰め込まれる。

 この章で自分にも当てはまると思った部分は「体言止め」「接続詞」の2つ。

 体言止めを使うと文章にリズム感が出るので、よく使う。ただ、体言止めは読者に「後ろに続くはずだった動詞」を考えさせる手間も付随するため、使いすぎると読む負担になると唐木さんは言う。至極真っ当である。使いどころは省略元が明らかな場合に限ろうと決めた。

 それから「接続詞」。接続詞直後の読点はバカっぽく見えるらしい。やめます。

 

第5章 読んでもらう工夫

 最後は表面的なテクニックについて。基礎を固めた上で、さらなるレベルアップのために参考にしたい。

 個人的には「テンプレート化」注意のパートに心当たりがある。文章を作る型がある程度身につくと、大抵の文章を同じような書き方で書いてしまうため、記事がマンネリ化してしまうそう。毎回「はじめに」「全体をみて」「各章」「おわりに」で構成される当ブログ、そろそろ変革の時か。

 

おわりに

 とはいえ、「はじめに」や「おわりに」はレポートや論文、本を書くときのフォーマット的な構造であり、僕はここを書くのが結構好きなのでやっぱり書いてしまうだろう。唐木さんも「意図を込めたルール違反は違反ではない」と言っていることだし。