初めの一歩は絵で学ぶ 微生物学
初めの一歩は絵で学ぶ 微生物学
はじめに
高校の頃生物の授業が好きだった。高校の頃「生物」のテストで、1位の座を死守し続けたぐらい好きだった。文系なのに。「生物基礎」では物足りなかった。実際に生き物と触れ合うのは苦手だけれど、教科書に登場するたくさんの生き物はいつも魅力的だった。細胞、ウイルス、微細物達はとても小さいけれど、彼らを学べば学ぶほど、世界は宇宙みたいに広がった。
高校2年世の頃は何を思ったか、文系科目+生物で受けられる生物系の大学を目指したこともある。今は思い直して法律を勉強しているけれど。大学に入ってからは教養科目で生命系の授業をとり、それなりに満足している。
そんな生物学への気持ちを再燃させる本、じほう発行・杉田隆著「初めの一歩は絵で学ぶ微生物学」について。
全体をみて
「絵で学ぶ」というだけあって、本書の半分は解説付きのイラストで構成される。先に文章で説明してから、絵で補完するスタイル。この絵が絶妙にゆるくてとてもいい。やる気のなさそうな表情をする微生物達が愛おしい。
ただ文章パートは専門用語も多いので、理系や専門の人でなけれ端折ってしまってもいいだろう。僕は結構読み飛ばした。
以下面白かった記述について。
①線毛と鞭毛の違い p14・15
原核生物と言えば、周りにモジャモジャと生えた毛だ。高校レベルだとこれには線毛と鞭毛の2種類がある、と学ぶ。その違いは「くっつく線毛」「動く鞭毛」である。他の生物や細胞に接するために使うのが線毛、運動に用いられるのが鞭毛ということだ。
②2kg p24・25
人の体には1kg〜2kgの微生物が住み着く。全員いなくなれば最大2kgほど痩せられるけれど、それをやったらいなくなるのは僕らの方だ。
③突然変異 p30・31
塩基配列が変化することによって起きる変異。これが起こると生物は形や構造が変えある。この変異には種類によって「ミスセンス」「ナンセンス」「フレームシフト」などの名前がそれぞれついていて、ネーミングがかっこいい。
④プラスミド p32・33
最近が持つ染色体以外の小さなDNAのことをプラスミドと呼ぶ。プラスミドは線毛を介して他の細胞に乗り移ることがあり、その中には移動先に元々いたプラスミドと共存できない物もいるそう。このプラスミドの性質を「不和合性」と言う。人間でも不和合性持つ人いますよね。プラスミドみたいだね。
⑤免疫システム p42・43
免疫システムの単元が高校の頃一番好きだった。細胞性免疫と体液性免疫の違い、マクロファージや好中球の活躍、キラーT細胞の傍若無人っぷりなど、刺激的でカッコ良い。体の中でこんなドラマが絶えず繰り返されていることを思うと興奮する。
⑥マーシャルとピロリ菌
科学者には頭のネジが外れたエピソードがつきものである。南方熊楠もそうだが、なぜ彼らはいとも簡単に自らを犠牲にするのだろう
マーシャルは胃炎の原因がピロリ菌であることを示すために、自らピロリ菌を飲んだ。見事発症し、原因は立証された。彼はノーベル賞を受賞した。賞金の使い道は治療費だろう。
⑦梅毒とウサギ
梅毒をもたらす菌は人工培地で培養することができず、唯一ウサギの睾丸でのみ培養が可能であるそう。なぜわかった。なぜウサギの睾丸で試した。
⑧ウイルス
昨今何かと話題のウイルス。彼らはかなり単純な構造をしており、増殖のためには吸着した宿主の持ち物を使う。ただしヒト細胞RNAをDNAに転写(逆転写)することができないから、それは自ら行う。利用できるところはして、無理なら自分でやる、なんだか見習うことができる姿勢ではないか。ここに注目する限り「ウイルスみたいだね」はビジネスマンにとって褒め言葉かもしれない。
⑨アスペルギルスアワモリ
泡盛を作る菌のことをこう呼ぶ。かっこいいね。
抗生物質ペニシリンは、研究の過程で偶然発見された。有名な話かもしれない。
おわりに
生物学ではたくさんの「イカす」ネーミングが出てくる。勉強する醍醐味の一つだ。そんな僕が本書で最も格好いいと思った名前は「特別病原体ブリオン」。ハンターハンターに出てきそう。