森の雑記

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3000円投資生活 はじめての資産形成

3000円投資生活

はじめての資産形成

 

はじめに

 コロナウイルスの影響で仕事やアルバイトができず、経済的な不安を抱える人は多いだろう。また、この状態ががある程度鎮静化した後には、増税も視野に入る可能性がある。この状況下では、ただ漫然と貯金をしていても、インフレなどが起きることを考えると安心はできない。「金持ち父さん」でもあったように、貯金ではなく「資産」、つまりお金に働かせる仕組みを個人が作る必要性を感じる。

 今回は2016年発行のやや古い本であるが、投資について初心者が始めるいろはを教えてくれる本書について感想を書く。

 

全体をみて

 初心者向けと書いてあるだけのことはあって、非常に読みやすかった。適宜ポイントをまとめてくれたり、文章がですます調であったりと、理解度を高める工夫が凝らされており、一時間ほどで読み終えることができた。

 投資について知識がなく、なんとなくリスクを感じているから始めない人は多いと思うが、まずはリスクを極小に抑えて始めてみよう、という気になる。

 

PART1  さあ、3000円投資生活を始めよう

 超低金利時代の昨今、貯金をしているだけではためたお金は増えず、銀行という名の倉庫に眠るばかりだ。そのうちの本の少額、月々3000円を投資に回すことを筆者は勧める。ステップは簡単。①ネット証券口座を開く②バランス型の投資信託を選ぶ(一番のおすすめは世界経済インデックスファンド)③積み立て金額を月々3000円、分配金コースを再投資型に設定する。この三つである。

 投資信託とは、投資家から集めたお金をプロが運用し、利益を投資家に分配する商品である。中でもバランス型は、日本・海外の株式・債権をバランスよくパッケージしたもののことだ。投資信託の価格は日々変動するが、積立設定をすることで、毎月金額の上限で買える分だけを購入することになり、値動きを気にせずいつでも投資を始められる。

 もちろん投資である以上、元本割れのリスクは存在するが、インデックスファンドは世界経済の成長に賭ける投資商品であるため、超長期的な目で見れば、少しづつでも成長する可能性が高い。短期間で大きな利益を上げるのは難しいけれど、長いスパンで少しでもお金を増やす手法がインデックスファンドへの投資だ。

 より踏み込んだ投資をしたいならば、バランス型ではなく、個別のインデックスファンドを次に検討することと、「NISA」制度(投資利益非課税制度)を利用することの是非について説明し、このパートが終わる。

 文字で書くと難しそうに見えるけれど、ようは「口座を開いて月3000円でいいから投資に回せ」ということだ。ダメージも少ないし、高確率で元本+αが返ってくる。投資に回すお金を確保するため、家計節約のモチベーションにもなる。

 

PART2 3000円投資生活なら「貯金感覚」

    でコツコツ増える

 お金の作り方、使い方をレクチャーするパート。

投資を行うため、始めに自らが使っているお金を管理することを勧められる。まず、支出を①消費=必要な支出、食費や交通費など②浪費=嗜好品、ギャンブルなど③投資=必要ではないが、資産形成に役立つもの、この三つに、この分ける。次に収入に対する比率をそれぞれ①70%②5%③25%に枠組みする。最後に③を貯金15%、投資10%に分割する。この管理によって、投資資金を作り出す。

 このパートのメインは上記にある。加えて、

●いざというときのための貯金  

貯金は月収7.5か月分が望ましい。使うための1.5か月分貯金と、よほどのことがないと下ろさない6か月分の貯金を確保する。

●マイホームは必要か

賃貸に払うより、家を買って資産に、と考える人は多い。しかし、生活変動のリスクや、各種税金により、考え方次第では持ち家は負債にもなりうる。

●長期的な目標をたて、手間をかけない

子供の進学や老後生活など、長期スパンで「いつまでに」「いくら」お金を作るかを設定することで、金銭管理のモチベーションを作る。また、長期的視野に立つことで投資に日常を左右されず、ある程度ほっておくことも大切。

 など、様々な具体例を用いて投資への心とお金の準備を説く。

 

PART3 1万人の家計を見てきてわかった

   「投資の分かれ道」 

 ここからは、投資に関してもう少し踏み込んで、ほぼノーリスク(国債のリスクは円そのものが破たんすること)でローリターンの国債についてや、保険料の見直し、確定拠出年金制度について教えてくれる。貯金するくらいなら国債を買ったほうがいいし、保険や年金については知らないと損することが多いな、と思わされる。ふるさと納税や格安スマホについての章も。浮いたお金で投資額を増やそう。

 

PART4 絶対にやってはいけない、投資とお金の使い方

 投資をする上での禁忌を語るパート。金融機関おすすめの商品は手数料が必要以上に高かったり、賃貸不動産経営の成功率はとても低かったり、多くの投資商品はその売主が手数料などで儲けるためにものなので、「騙されてはいけない」。

 

おわりに

 お金については、「知らないと損する」「動かないと損する」ことが非常に多い。不安だから貯金というのもいいだろう。事実、コロナ禍では内部留保が多い企業が生き残るし、貯蓄のある家庭は強い。ただ、全てを貯蓄に回すのでは効率が悪い。

 この本は少し古い本だけれど、内容は中田敦彦Youtube大学で紹介された山崎元さんの本ともよく似ているから、的外れでもないはずだ。PART1だけでも読むと世界が変わる。

お金の見方を180度回すことで、投資にお金が回せるようになる。