大人のためのホテルの使い方
大人のためのホテルの使い方
はじめに
「大人のためのホテル」と聞くとなにやらいかがわしい本なのか、と邪推してしまうが、本書はシティホテルやリゾートホテルなど、ややハードルが高いホテルから、通常のビジネスホテルの快適な利用法を伝授するものである。
5年ほど前だろうか、帝国ホテルやリッツカールトンなどの大手のホテルマンの仕事ぶりをテレビで見たことがある。彼/彼女らの真剣で機転の利いた仕事ぶりには感嘆させられた。それ以来、僕の将来の仕事選びの選択肢に「ホテルマン」が入った。
結局、就活の末ホテルには関係ない仕事をすることが決まったわけだが、それでも「ホテル」という場所への愛着は変わらない。親が会員になっているリゾートホテルも幾度か利用させてもらったが、滞在は非常に満足のいくものだった。
最近は「Hotel SHE」グループなど、独自の試みをするホテルも増えてきていて、ホテルは単に寝泊まりする場所の域を超え、体験を提供する場になっている。
そんなホテルの様々な楽しみ方を伝授するのが本書である。
全体をみて
ドラマのモデルにもなった伝説のホテルマン、窪山哲雄さんが書いたこの本。なるほど、と思う蘊蓄や、いろんなホテルを使ってみたくなる豆知識が随所にちりばめられている。この本を読めば、上品に、かつ自分流にホテルを遊んでみたくなることだろう。
以下、各章の覚えておきたい「ホテル技」を挙げる。
第1章 ホテル選び・予約・当日チェックインのコツ
この章で面白かったのは、「当日でも必ず予約の電話を入れる」テクニック。予約なしで泊まる、「ウォークイン」の客は、成り行きで入った客と見られるため、リピーターにはならない、と認識されることが多いそう。これだとホテル側も接客に力が入らない。電話などで、ほんの少し前でもいいから予約を入れ、客としての信頼度を上げるとともに、ちょっとしたお願い(「角部屋空いてますか?」と聞く等)をしてみると、ホテル側からの好感も上がるそう。
第2章 客室はこう使え
・持ち帰っていいもの
バスアメニティやスリッパは基本的に持ち帰りOK。いいホテルではこうしたアメニティに力を入れているので、友人が自宅に泊まりに来た際にそっとあげたりするのもおすすめ。
・ルームサービス
レストランの空いていない時間に、おなかを満たすためだけのモノと思うことなかれ。自らの部屋でくつろぎながら、用意してもらった食事やワインを楽しむ贅沢はなかなか味わうことができない。持ち運びの際にはバスローブでスタッフを出迎えてもマナー的にはOKだそう。客室はプライベートな空間である。
第3章 フロント・コンシェルジュ活用法
フロント機能を余すことなく使うことを勧める章。ここで出てきた、フロント、コンシェルジュ、バトラーの違いの説明は初耳だった。
・バトラー
日本語に訳すと「執事」。客のリクエストを先読みして行動する点で、コンシェルジュとはスタンスが異なる。日本ではまれな存在。
・フロント
ホテルのオフィス的役割。コンシェルジュやバトラーがいないホテルでは、ここがその役割を果たす。
第4章 レストランとバーを使いこなす
その昔、麻生太郎氏が「ホテルのバーは高くない」と言って炎上したことがあったが、ハイソサエティの間ではこの認識は普通らしい。僕ら庶民からすると確かに値段は張るが、提供されるサービスの質を考えると大変リーズナブルなものだとも言える。ウイスキーに使う氷の形、グラスの厚さなど、さまざまにこだわりぬかれたホテルのバーは、女性にもお勧めだそう。品の良い客をえりすぐっているので下手なことはまず起きない。
窪山さんは、ホテルでいちばんおもしろい場所はバーだとするほど、ホテルのバーを利用することをお勧めしている。
第5章 ジム、プール、スパで体と心を整える
ある程度以上の規模を持つホテルでは、ジムやプールが併設される。こうした施設を利用することもおすすめだそう。
ホテルのプールは泳ぐだけでなく、プールサイドで水着など開放的な雰囲気の中、お酒を楽しむのにもってこい。ハワイの「ハレクラニ」ではほとんど誰も泳いでいないらしい。
第6章 高級ホテルの楽しみ方
この章は全体的に敷居が高すぎるので、面白いと思った豆知識をひとつ。
「ロールスロイス」は「運転手が運転する車」の最高級なので、これを自分で運転するのは野暮だそう。ロールスロイスを買おうとする皆様、ご注意あれ。
おわりに
スマートで余裕のある大人になるために、上品なホテルの使い方はぜひマスターしたいところ。大学四年生、卒業旅行の宿泊先はエアビでいいかな、と思っていたけれど、方針転換します。