森の雑記

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9つの性格 エニアグラムとは何か

9つの性格

エニアグラムとは何か

 

はじめに

 血液型占いや星座占い、タロットカードなど、この世には溢れんばかりの「占い」が存在する。これらを本気で信じている人は今や少数派だろうし、科学的根拠がないことも誰もが知っている。それでも、朝、ニュース番組の星座占いで自分の星座が1位だと少しハッピーになるし、著名な占い師のもとには長蛇の列ができる。どうやら根拠の有無と興味には関連がないようだ。

 本書が紹介する性格分類の手法、「エニアグラム」は一定の心理学的な検証を経た、いわば「科学的な」占いである。上記の診断より幾分かは信用度が高い一方、ネガティブな側面と向き合うことも余儀なくされる。それでも、5000円払って占いの予約をするより、たった700円で有意義な自己分析を行うほうがいいと思うのは僕だけだろうか。

 

全体をみて

 エニアグラムによる性格分類の後、それぞれの性格を詳細に分析するのが本書のウリである。したがって、自分の性格だけを考えたいのであれば、本書で読むべきは1/9の分量になる。僕は他の性格はほとんど読み飛ばした。

 性格分析では、陥りやすい傾向(「囚われ」と本書ではよばれる)や他の性格との相性など、多くの示唆を与えてくれるので、自己分析や人間関係にも応用できそう。

 

第1章 エニアグラムの知恵

 この章では、エニアグラムの成り立ち解説とともに、自分が9つの性格のうちどれに分類されるかを診断する。

 エニアグラムの歴史解説パートでは、冒頭その起源がイスラム神秘主義の宗派、スーフィーであることが語られるなど、なんだか怪しい感じがする。似非科学の類のようなものを見ている気になる。著者はこうした読者の気持ちを汲み取り、続く文章でエニアグラムの科学的検証を示す。これによって、エニアグラムに、完全に信用しきれる指標ではないけれど、参考程度にはなるかな、という気持ちが起こる。

 分類パートでは9×20個のYES/NOクエスチョンに答えることで、自らが9つのうちいずれの性格に当てはまるかを知る。質問の構造は、ⅰ群20問、ⅱ群20問、ⅲ群20問、、と20問ごと9つの群に分かれており、各質問への答えがYESならチェックボックスに印をつけていく構造。すべての質問に答え終わったとき、最もチェックの多かった群の番号が自らの分類となる。僕はⅲ群の印が一番多かったので性格はタイプ3に分類された。

 ちなみにタイプ3は「成功と効率を追い求め、自らの評価を多分に気にする自信家」だそう。なにやら恥ずかしい。

 

第2章 あなたを衝き動かす「囚われ」を知る

 各タイプの性格が持つ個性が、苦境によってネガティブに作用する傾向のことを、本書では「囚われ」と呼ぶ。中でも時間に関する囚われの記述が面白い。

 各タイプごとで時間に対する感覚は大きく異なる。僕が分類されたタイプ3は時間を「成果達成のために使いこなすもの」ととらえる傾向があり、いわゆる「ムダ」な時間を嫌うらしい。一度タイプ分類されてしまうと、その記述がどんなものであれ当たってしまうと感じるバーナム効果的な気持ちに気を付けなくてはいけないが、確かに時間を効率的に使うことに関しては自信と必要性を感じる。

 また、各タイプの「中枢」(言い換えるなら、判断軸か)についても書かれていて、思考中枢・本能中枢・感情中枢の3つのうち、タイプ3は感情中枢で行動するそう。これほど成功と効率を重視するタイプ3が感情を判断軸にする傾向は少々意外かもしれない。しかし、読んでいて、もしかしたら感情中枢型かも、と思っていたらまさにそうだった。侮ることなかれ、エニアグラム

 

第3章 囚われたあなたの姿を知る

 先章を踏まえ、自らの囚われを理解し、受け止めることを説く章。

タイプ3は過活動やうぬぼれの傾向が強いことがわかる。自らの弱みを理解することって必要ですよね。本当に。

 

第4章 あなたは、変わることができる

 いっきに自己啓発本っぽくなるこの章。自分のネガティブな面を知り、理解したうえでマイナスの傾向を抑えていく方法が説明される。

 

おわりに

 自らの分類のみを読んだおかげで、さくっと読み終えることができたこの本。自分を知るために他者の知見や分類に身をゆだねるのも悪くない。と思いながら本を閉じた瞬間に気づいた。自分のことのみを考え、他者の性格を理解しようとしないこの読み方こそ、タイプ3の「囚われ」ではないか。まだまだ理解が足りなかったなと思いつつ、再び本を開く。