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リモート営業入門

リモート営業入門

 

はじめに

 リモート飲み会、リモート収録、リモートワーク…リモート〇〇は僕らの生活に完全に根を下ろした。家にいながらのコミュニケーションには多少のストレスを感じないでもないが、その違和感を補ってあまりあるほどの手軽さを僕らに提供してくれる。

 一方でビジネスにおいては、これまで面と向って行ってきた会議や営業に関していわゆる「空気」をうまく作れず、苦戦を強いられる場面が散見されるようだ。まだ社会人ではないので実体験はないけれど、空気感を共有できないことは確かに対人コミュニケーションを不活性化させそう。

 そんな悩みに答える本が、水嶋玲以仁著「リモート営業入門」(日経BP)である。

 

全体をみて

 リモート営業に必要なことを学べるだけでなく、「営業」のあり方を見直すことができる本。もちろんズームやチームスを用いた営業にフォーカスしている本なのだが、書いてあることはかなり汎用的で、対面の営業にも生かせそう。

 これを読んで実践すれば、様々なスキルが身についてより良いリモートライフが遅れるはず。以下、各章気になった部分について。

 

Ⅰ章 リモート営業がニュースタンダードになる理由

 コロナ禍、非対面型のビジネスが主流になりつつある。とはいえ元々テレワークは拡大の兆しを見せていたので、新型コロナウイルスがこの流れを加速させたといったほうが正しいか。この章ではそうした現在地点を元に、これからの「リモート営業」を外観する。

 この章で好きな言い回しは「顧客に恋する」という言葉。「リモート営業」は無味乾燥なものに聞こえるが、顧客を理解する面に関してはむしろアドバンテージを持っている、と著者。相手にサービス(自分)を売り込むには、相手の性格、取り巻く環境、現在の立ち位置を総合的に理解した上で適切なアプローチをしなくてはならない。なるほどこれは恋と同じ。こちらの都合ではなく、相手を主語において物事を考えなくてはならない。さらにサービスのサブスク化が進む現代では、顧客との関係は長期に渡ることも。より一層「恋愛」的な考えが必要であろう。

 「タイミング」が大事な部分、営業は恋愛にそっくり。

 

Ⅱ章 アポイントはこうして獲得!顧客開拓の進め方

 顧客とのファーストコンタクトを教えてくれる章。顧客との出会いは、メール、電話、展示会、様々な場面が想定できるが、特に非対面でのハウトゥーを指南する。

 この章で覚えておきたいのは「最初の電話は2、3分」というお話。顧客と電話でやりとりできる段階になったら、まずはごく短い電話でこちらの人となりを知ってもらい、相手の雰囲気をつかもう。長い電話で捲し立てると不信感をもたれるし、何より初回の電話は相手もまだ様子見。この段階では長話を聞く用意はできていない。

 この「最初の電話」理論は営業だけでなく人間関係構築全般に言えそう。

 

Ⅲ章 信頼を得られるテレコミュニケーションのコツ

 本書のサビと言っていい。この章ではオンラインでのやり取りで信頼を構築するやり方を学ぼう。

 まずは「P・O・IN・T」。コミュニケーションのシナリオをフレームにしたもので、「Purpose」「Outline」「Input」「Translation」の頭文字。会話はまず「目的」を示し、ついで「概観」今回話す内容をおおまかに伝える。それから情報を「入手」し、最後に「次へ導入」という順である。特に重要だと思ったのはアウトライン。これがあるかないかで会話の理解度は大きく変わる気がする。水を入れるのにはまず水槽を用意したほうがいい。金魚や飾りはその後だ。

 それから「熱量キープ」の重要性にも触れておこう。動機や意欲は会話直後に高まるが、時が経つに連れて下がっていくもの。定期的な接触で相手と自分の関係を温め続けよう。

 

Ⅳ章 個の経験をチームの力にする底上げマネジメント

 対面営業は個人の雰囲気や関係に左右されやすく、紹介や引継ぎみたいな場面がなければノウハウが共有しにくい。しかしオンラインならやり取りを録画しておくこともできるし、顧客データの管理だってクラウドを使えば簡単にできる。DXはノウハウを共有するのに役立つ。 

 ソフト面では定期的な声かけで仲間意識を作り、ハードには情報共有を仕組み化する。これでリモート営業はチーム戦にできる。

 

おわりに

 ビジネス書はやっぱり1時間もあれば読めてしまうのがいい。全てを吸収するのは不可能だが、少しでも残ったことを今後に生かそう。