ロングセラーパッケージ大全
ロングセラーパッケージ大全
はじめに
黒のVANSオールドスクール、明治美味しい牛乳、おかめ納豆、僕たちの身の回りにはたくさんの「定番」がある。ずっと変わらないそれは「とりあえずこれ」という安心感を与えてくれるし、事実パフォーマンスがいい。
けれどこうした定番品だってアップデートを重ねている。特に見た目。とても分かりにくいものから大幅なイメチェンまで、その変化のバリエーションは多い。
こうした商品はいかにして「お馴染み」になったのか。日経PB社発行「ロングセラーパッケージ大全」(日経デザイン編)はその過程を教えてくれる。
全体をみて
いくつかの商品をピックアップして、そのパッケージ変化を分かりやすく視覚的に表現してくれる本。豆知識も豊富に盛り込んであるなど、読んでいてけっこう楽しい。
以下、お馴染み4つの商品について。
みんな大好きコーヒーへの登竜門。学生時代はこればっかりだった方も多いのではなかろうか。甘ったるい風味は莫大なカロリーを必要とする時期にぴったりだった。
そんな雪印コーヒーは、当初テトラパックで売られたが、1970年に「雪印ラクトコーヒー」として紙パックも登場。この時から茶色を基調としたカラーリングが行われている。
2000年には雪印グループの不祥事でブランドイメージが低下。同商品をリニューアルするに当たって「何を残し、何を捨てるか」には苦心したという。そこで使われたのがミルクとコーヒーを混ぜ合わせるグラフィックだったそう。
かつてほど飲まなくなったけれど、時々無性に飲みたくなる味。パッケージは微妙に変化しているようだが、変わらぬ甘さを届けてくれる。
こちらは袋麺界のトリプルエース。次男味噌の評価がやや抜けているか。実はサッポロ一番「しょうゆ」「みそ」「塩」を見比べると、パッケージには驚くほど統一感がない。パッと見おなじ会社の商品だとは思えないくらいだ。これには個性が異なる3つの味を尊重する意図があるらしい。
ちなみに「しょうゆ」パッケージ右上にある矢印が何を示しているのかはわかっていないらしい。ミステリアス。
のりたま
お弁当のお供、いや食事のお供というべきか。緑のパッケージを知らない日本人はいるまい。昔はすごく高級品だったらしく、量り売りも行われていたんだとか。それに合わせてパッケージも高級感?を出すためにリアルな鶏の絵が使われていた。けっこうきもい。
現在は鶏だけでなくひよこのイラストも可愛らしくあしらわれている。これはかつて「のりたま」を食べていた世代から、その子世代にも商品を広めていこうとする意図があるらしい。なんでもないところにきちんと意図があるやり方、とても好きです。僕はのりたま第2世代になると思うが、できれば第3世代まで残っていて欲しいな、なんて。
ヤシノミ洗剤
今回唯一知らなかった商品。透明のパッケージが可愛い。ビジュアルにシンプルスマートを求める今の時代には非常に合っている。
またこの商品は無香料無着色植物由来の洗剤らしく、手にもやさしい。手荒れが酷い僕としてはありがたい。これから使ってみたい。
おわりに
パッケージは商品の顔である。そこにどんな思いを込めるか、何を見せるかは、人で言えば服装や髪型を考えることに近い。どんなにシンプルなイメージでも、中にきちんとした意図が介在するものは美しい。のりたまのように、僕たちも見た目に意図を、と思わされる本だった。