ニューヨークで考え中3
ニューヨークで考え中3
はじめに
高校生の頃、一冊のエッセイ漫画に出会った。当時は「ことりっぷ」や「aruco」など海外旅行ガイドを読むのにハマっていた。修学旅行でシンガポールに行ったせいで、「海外への憧れ」的なものが芽生え始めた時期だったからだ。特に好きだったのはことりっぷの「プラハ」だったのを覚えている。
そんなわけで書店の海外旅行コーナーに入り浸っていたのだが、そこで見つけたのが「ニューヨークで考え中」(亜紀書房)という、近藤聡乃さんが書いたエッセイコミックだった。
ニューヨークに居住する彼女のリアルかつ素朴な生活が生き生きと描かれる本書に、僕は虜になった。すぐに立ち読みをやめて購入し、家につくのも待ちきれず帰りの電車ですぐに読んだ。
さてこのエッセイ漫画、この間2巻が出たばかりだと思っていたら、先日3巻が出た。1巻〜2巻の期間よりも短いスパンで出版された気がするのだが、発行日を見るとそうでもなさそう。2巻が出たのを知ったときは飛び上がって喜んだが、(1冊限りの本だと思っていた。)今度は落ち着いて見つけられた。
全体をみて
相変わらず具体的かつ気取らない雰囲気で書かれたエッセイだった。だが、今回はコロナウイルスのことや「外国籍」のこと、ご自宅が水浸しになった事件など、これまでよりバタバタとしている様子がうかがえる。大変だったんですね。
以下、好きなところ。
マッツァボール
チキンスープに小麦玉が浮かべられたユダヤ料理。アメリカでは定番らしく、とても美味しそう。日本で耳にする機会は全くなかったが、どこかで食べられるのだろうか。
日常
アメリカでの生活にすっかり慣れ、毎日のルーティンを過ごす近藤さんの日常が書かれた回「夢その2」。このなんでもない描写、コーヒーを飲んで、夫と暮らす生活のイラストレイトこそ本書の真骨頂だと思う。
花を買う
「一人暮らしで花を買うのは贅沢」という価値観、素敵だと思います。夫と娘のために花を用意する最後のコマも。
外注
結婚してからは、旦那様馴染みのハウスキーパーさんに仕事を頼むようになった近藤さん。他人に家事をしてもらうのは恥ずかしい、という感覚が抜けないことを嘆く姿も等身大でいい。こういう感情を素直に見せてくれるところもいい。
回顧展
近藤さんの作品を振り返る個展が福岡で開かれたお話。自分が作ったものがきちんと形に残り、作品を見るとその時の感情が思い出せるのっていいですよね。僕もこのブログをそんなふうに見る時が来るのだろうか。
大ゴマ
このコミックは毎冊最後に書き下ろしがつく。この書き下ろしでは大きめのコマに風景が描かれるのが恒例?なのだが、今回もすごくいい。今はしばらく海外にいけないけれど、いつか行ける日がきて欲しいなあ、と思う。
おわりに
最初に「ニューヨークで考え中」を読んでから早5年、近藤さんの生活が大きく変わったように、自分の生活も大きく変わった。4巻を読む時、いったい自分はどんな暮らしをしているのだろう。