アイデアスケッチ
アイデアスケッチ
アイデアを〈醸成〉するためのワークショップ実践ガイド
はじめに
画期的なアイデアを出すのは難しい。ある課題を解決しようと頭を捻っても、出てくるのは以前にも見たようなものばかり。時折新しそうなものが思いついても、既存物のマイナーチェンジにしかすぎない。いわゆる「ブレインストーミング」にチャレンジしてもうまくいかず。僕たちはしばしばこんな場面に出くわす。新しくて素晴らしい発想を得るのは難易度が高く、これがホイホイできるなら何らかの分野で大成功しているに違いない。
「アイデアスケッチ」(BNN新社)は、このような悩みに立ち向かうために役立つ本のうちの一つだ。岐阜県にある小さな学校「IAMAS」で実践されてきたアイデアスケッチのメソッドを知れば、僕らもアイデアマンになれるかも。
全体をみて
装丁がおしゃれ。レイアウトも見やすい。なんともコンテンポラリーな本である。ただ、文章が読みにくい。本書のメイン著者は英国出身のジェームズ・ギブソンさんなのだが、彼が書いた日本語、もしくは彼の書いた英語を翻訳した記述が「Googleの自動翻訳」もしくは「受験生が行う不自然な和訳」見たいな感じだからだ。もしギブソンさん自ら日本語で書いているとすれば、これはネイティブではないのによく書けている、むしろ素晴らしく上手な日本語だと思う。しかし出版にたえるレベルではないのでは。
本書は3章構成である。1章では「アイデアスケッチ」とは何か、が背景や成立過程こみで語られる。2章では具体的な実践方法、3章では実際にアイデアスケッチが使用されたれいが、それぞれ書かれる。
前述した文章の堅さが気になるのは1章のみで、本書でもっとも重要な2章はそれほど気にならないのが救い。
以下、各章について。
第1章 アイデアスケッチの方法論
アイデアスケッチの来歴、利点などが書かれる。時間がない方は読み飛ばしても。
第2章 アイデアスケッチの実践
アイデアスケッチのやり方について。ここでは僕なりに要約。
1 ペン4種(細・太・ハイライト・影)とワークシート3種を用意。
2 アイデアスケッチに参加する人数が十分に動きやすい部屋を用意。
3 参加者をセッティング。半日ほどスケジュールを抑える。できれば様々な分野の人を集めたい。
4 1種目のワークシートを用いて「アイデアスケッチを行うテーマ」を絞る。
5 2種目のワークシートにアイデアを「絵で」描いていく。
6 それぞれのアイデアに投票。
7 アイデアを「実現可能か」「実行可能か」のマトリクスを使い4象限にマッピング。
ざっとこんな感じ。具体的なワークシートのフォーマットなどは本書を読まれたい。なお7の「実現可能」とは「技術的に実現可能か」を指し、「実行可能」は「組織のリソース的に実行可能か」を指す。
こういうワークショップ的なアイデア出しを説く本では、必ず部屋にお菓子や飲み物を置くことが勧められている気がするが、本書も。
第3章 アイデアスケッチの事例紹介。
実際にアイデアスケッチセッションが行われた事例を5つ紹介。中でも「電車の椅子をより快適にするにはどうすればいいか」というテーマは身近で面白かった。
おわりに
かなり面白いアイデアの出し方、新しいブレインストーミングの形だと思った。チャンスがあればやってみたい。