森の雑記

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無印良品は、仕組みが9割

無印良品は、仕組みが9割

 

はじめに

 無印良品にはいつもお世話になっている。化粧水やノートなどの消耗品は価格も使い心地も「ちょうどいい」。バターチキンカレーや不揃いバームなどの食品はシンプルにおいしい。服はクセがなくて着やすい。

 そんなこのブランドには僕だけでなく多くの愛用者がいる。無印良品はいかに「定着」してきたか。その手法を明かすのが良品計画会長松井忠三著「無印良品は、仕組みが9割」(角川書店)である。

 

 全体をみて

 かつて無印良品は38億円の赤字に陥ったことがある。しかし松井さんが行った様々な施策によって、見事V字回復を成し遂げる。そこには独自のマニュアル、「MUJIGRAM」と「業務基準書」があった。

 マニュアルと聞くと無機質な感じがするけれど、無印のそれはちょっと違う。それは現場の声を積極的に取り入れる「仕組み」であり、目安箱のようなものだった。目指すのは「機械化」ではなく「標準化」。そんなマニュアルを作った松井さんはどのようなことを考えたのか、本書には彼のアイディアがたっぷり詰まっている。

 以下、参考になる記述について。

 

意識改革より行動改革

 経営の雲行きが怪しくなる。コンサルタントを外部から招き、幹部に研修を受けさせる。社員の意識を変え、業務を改善する。

 これは企業によくみられる対処法である。しかしこの方法を松井さんが西友に在籍したときに取り入れても、全く成果は出なかったそう。これを機に、人の意識は「仕組み」を作ってそれにしたがって行動するうちに少しずつ変わるものだと気づいたんだとか。

 人の意識はソフトなものだから、研修などを行えば手取り早く動かすことができる。しかし、戻るのも早い。だから「行動」を先に変える。より本質的な部分から着手時ないといけない。

 

走りながら考える

 何か新しいことを始めるときは「7割」の状態からでいい。あとはやりながら変えて、完成させていく。ビジネスの世界は変化しやすい。あるものシステムの10割完成を待っていても、できた時にそのシステムは役立たずになっているかもしれない。だから、「走りながら考える」。

 VUCA化、コロナ禍、どんどん不確実になっていく世界においては、この「走りながら考える」姿勢が必要だ。

 

同質の人間どうしの議論

 社内で会議やディスカッションを繰り返してもなかなか目新しい意見は出ない。それもそのはず。同じ会社に採用されて入っている時点で、そこにいる人間はある程度均質だ。そんな人たちがいくら意見を交わしても新たな視点は生まれにくい。

 僕も受験や就活終えて同期と会ってみると、経歴や趣味嗜好は異なれど「価値観」みたいなものは、これまで属したどの集団よりも近しい気がする。何かを変えたいときは外部の視点を取り入れてみよう。って、若干「意識改革」のところと矛盾するようなハウトゥ。

 

デッドライン

 「いつでもいいから」と言われて頼まれたことをやる人は稀。人に何かをさせるならデッドラインを設けよう。ただでさえデッドライン(課題の締め切りや単位取得)があってもできない人がいるのだから、なかったら。

 

注意のマニュアル化

 人を叱ったり注意したりするときは、えてして感情的になるものである。長時間に及んだり、自分の経験を語ってしまったり、そんな注意には百害あって一利なし。と分かっていても、ついついやり過ぎてしまうのが人間である。そこで説教にもマニュアルを作ろう、というのが松井さんの提案。

 目的、場所、時間、方法などなど、あらかじめルールを設けて行えば、双方遺恨を残さない注意ができるかも。

 

おわりに

 当たり前といえば当たり前のことがたくさん書いてあった本書。でも、マニュアルだってそういうものだ。当たり前を経験に頼らず「仕組み化」するのがマニュアルである。頭の中を変えるだけにならず、そのマニュアルを「実行」していくことで、行動を改善していこう。

 公開されたマニュアルの中で、個人的には服を畳むことを「おたたみ」と名付けているのが好きです。