森の雑記

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SNSマーケティング 第2版

デジタル時代の基礎知識

SNSマーケティング 第2版 

「つながり」と「共感」で利益を生み出す新しいルール

 

はじめに

 「SNS時代」を叫ぶにはもはや時代遅れの昨今。SNSを使いこなすことはビジネスパーソンに必須のスキルであろう。そしてその使い方は1つではない。ある企業はくだけた口調のツイートを頻繁に行い親しみやすさを獲得し、またある企業は洗練されたイメージ写真を定期的にアップしブランドイメージを確立する。ひと口に「SNSマーケティング」と言っても、手法は千差万別に見える。

 本書はそんな十人十色なSNSマーケティングに一定の共通理解を与えるものである。林雅之、本門功一郎著、翔泳社発行。

 

全体をみて

 横書きで書かれ、200頁ちょいの分量。半分は表や図なので、かなり読みやすいと言える。やっぱりビジネス書はすぐに読めるのがいい。SNSマーケティングに携わらないなら読み飛ばしても良いくらい具体的な知識も収録されているので、必要なければ読み飛ばしても大枠の理解には支障がない。

 類書としては「D2C」があるけれど、内容や装丁はこちらの方が洗練されていた気がするので、気になる人はそちらも。

 以下、各章について。

 

Introduction デジタル時代のSNSマーケティング

 SNSが浸透しきった現代の分析を行う。「企業発信のコンテンツは読まれにくい」「情報流通量は増えても消費量は変わらない」など、僕らの実感に即した意見が書かれる。まあ妥当。

 

Chapter1 基礎知識と目的設定

 はい、お勉強の時間です。といった感じの1章。SNSマーケを測る様々な指標や用語などかこれでもかと登場するが、拒否反応が出るような書き方ではないのでご安心を。企業がSNSを始める前に決める4大要素は誰もが知っておいて損はないと思う。

 ①目的 SNS運用でなにを達成しようとするのか。

 ②顧客 「ペルソナ」(具体的なプロフィールを想定する架空の人物)を作り、標的とする。

 ③選択 どのSNSを使うか選ぶ。

 ④想定 トラブル対応や運用方法をあらかじめ考えておく。

 この4つを決めておくことは、円滑なマーケティングの基礎になるようだ。

 

Chapter2 つながりを生むコンテンツのつくり方

 SNSで発信する内容を考える章。ただ闇雲に「出したい」情報を連投してもSNSユーザーは食いつかない。彼らが喜ぶ投稿を心がけるべきである。

 トンボ鉛筆のマトリクス図を用いた投稿は面白い上にためになるいいお手本である。

 

Chapter3 コンテンツの分析方法

 エンゲージメントや反響など、SNS運用を反省するには様々なデータがある。これらを効果的に使って正しい分析をすることで、より精度の高いマーケティングが可能になる。

 例えばしばしばエンゲージメント率(投稿を見た人のうち、いいねや拡散など好意的な反応をした人の割合)は、フォロワーが増えるに従って下がる。これは初期のフォロワーほど企業に愛着のないフォロワーが徐々に増えるためで、仕方がない現象とも言える。これを知らないとせっかくフォロワーが増えているのに、エンゲージメントばかりを気にして新規のフォロワーを置いてけぼりにした運用をしかねない。このように正確な分析・反省には正確な知識が必要なのである。

 またTwitterにおいてはアカウントの法人個人を問わず、PC版でアナリティクスが利用できるようなので、興味がある人は見てみるといいかもしれない。

 

Chapter4 ファンとつながるコミュニケーション 

 ここはもろに「D2C」っぽさを感じる。顧客をアンバサダー化するのは確かに難しい。実質タダ働きだもの。彼らにいかに特別感を与え、信頼を示すかが大切そう。

 

Chapter5 注目を集めるSNS広告

この章では企業アカウントからの発信ではなく、SNS会社にお金を払って行う「広告」の話がメイン。

 ここからは個人的な意見なのだけれど、SNSにおける広告って限界が見えてないですかね。YouTubeの広告には基本イライラしかしないし、Twitterの広告もクリックした試しがない。テレビCMもそうだけれど、基本広告って不快度が高いので、どうにか工夫をしないと出せば出すほど嫌われかねない。だから有名女優を起用したりするんだろうけど。

 一方で小栗旬が出演するカード会社のCMみたいに「見ていて面白い」ものも存在するので、活路はなこともないか。

 

Chapter6 炎上予防と対策

 炎上は常識と情勢意識の欠如から生まれる。時流を意識しつつ、配慮を忘れないことが大事。Chapter1にあるような事前のガイドライン策定も有効だろう。

 

Chapter7 運用効率を上げるおすすめツール  

 SNSマーケティングにまつわる様々なサービスが紹介される。実際に関わる人でなければ読み飛ばして問題ないだろう。

 

おわりに

 この内容をまとめて、ページにきっちり収める形で書き上げる著者の技量はとてつもない。強いて言えば7章でしれっと自社のサービスを紹介していたところが微妙か。まあ当然と言えば当然のことなのだろうが、あの紹介のしかたには若干もやっとする。手前味噌ですが、みたいな枕くらいおけば良いのになあ。SNSメディアにおけるマーケティングには長けている方なのかもしれないが、本という旧メディアでのマーケティングには疎いのかも、なんて。