森の雑記

本・映画・音楽の感想

TENET

TENET

 

はじめに

 クリストファー・ノーラン監督。超有名なのでもちろん名前は知っていたけれど、インセプションダークナイトを友人にゴリ押しされながら、なんとなく彼の作品を観てこなかった。いつかはね、みたいな。

 そう思っていると、新作「TENET」が公開された。同友人に誘われたので観に行った。事前情報0、あらすじも全く知らなかったけれど、そんなに勧めるなら、ということで。いい機会だし。

 

全体をみて

 これまでクリストファー・ノーラン作品を観てこなかった自分を殴りたい。いや本当に。映画を「観る」というより、これはもはや「体験」である。映像美、描写の妙、圧巻の構成、どこをとってもこれまでも観た映画とは種類が違う。

 正直話の構造が複雑で、初見では理解しきれない部分もあったけれど、にしてもあっという間の2時間半だった。一切の退屈がないし、ずっとドキドキする。個人的に「いい映画か」を決める指標として、「無駄な描写、無理のある描写」がいかに少ないかを観るのだけれど、「TENET」はそれがほとんどない。冗長な描写や突飛な展開が気になって集中できなくなることってあるじゃないですか。「TENET」にはそれが一切ない。ハイテンポかつ怒涛、だが緻密。

 以下、好きな場面。

 

オペラ襲撃

 冒頭オペラハウスがテロに遭うシーン、ここだけをとってもこの映画を見る価値があった。「クリストファー・ノーランってどんなもんかな」と椅子に浅く腰掛けたのも束の間、気づくとスクリーンに釘付けに。スピード感、カメラワーク、緊張感、、、たった5分で「あ、これとんでもないぞ」と。 

 オペラハウスの観客が全員催涙ガスで眠る画面はものすごく気味が悪い。でもなぜか目が離せない。

 

海に飛び込むキャット

 セイターを殺した後、海に飛び込むキャット。かつての弱かった自分に見せ付けるように、ダイナミックにジャンプする姿はなんともかっこいい。自由とはかくあるべし、的な。

 

誰に雇われた?

 この映画で一番かっこいいのは、誰がなんと言おうとニールだ。主人公のパートナーとして、時にお茶目に、時にシリアスに困難に立ち向かう姿もさることながら、彼の正体がわかった瞬間の感動と言ったらない。名前のない主人公は正体を知って涙を流すシーン、気付いたら僕らも泣いている。

 ラストシーンではなんだかニールが3人くらいいる気がしたのだけれど、じっくり考えながら解説を見ると、それにも納得。いやはやすごい仕掛けである。

 

おわりに

 間違いなくもう一度見る映画。「起きたことは変えられない」「感じるのよ」名言も多いこの映画は、単純に映像芸術を、また練りこまれた劇構成を同時に楽しめる超名作だと思う。