森の雑記

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世界一やさしい問題解決の授業

世界一やさしい問題解決の授業

 

はじめに

 このブログを始めたばかりの時は、けっこうな頻度でビジネス書を読んでいた。「金持ち父さん」「トヨタ式」などがその例だ。https://highcolorman.hatenablog.jp/entry/2020/04/04/140021

 けれど、ここ2ヶ月くらいはなんとなくビジネス書を避けていた。あの手の本は読後焦燥感に駆られるので、そんなに得意ではないから。読めばすごくためになるし、自分が成長したような気になる。けれど本の内容を実行することへのプレッシャーが大きい。個人的にはビジネス書1冊につき、何か1つでも生活に定着すればいいと考えているけれど、それすら簡単じゃない。一気にビジネス系の本を読んでいたあの頃は、とても充実していたがすごく疲れた。やっぱり短期間に何冊も読むものではない。

 そんなわけでしばらく遠ざかっていたビジネス書。そろそろ読む気力が湧いてきたので復帰戦をすべく、この本を選んだ。ダイヤモンド社「世界一やさしい問題解決の授業」、著者はイエール大卒の渡辺健介さん。なぜかヴィレッジヴァンガードポップのような帯がついていて、とても読みやすそうだったのでこれにした。リハビリには、きっとこのくらいがちょうどいい。

 

全体をみて

 ボリュームは100pと少し。「世界一やさしい」と銘打つだけあって、イラストや語り口がとても柔らかい。小学生にだって読めるんじゃないかと思う。内容は三部構成で、段階を追って「課題解決」のために必要な思考法を学ぶ。

 以下、絵本のようにポップな本書の各部について。 

 

1時限目 問題解決能力を身につけよう

 問題を解決するための超基礎的なノウハウを学ぶパート。

 本書では問題解決を4つの段階に分類している。それは、

①現状理解

②原因の特定

③打ち手の決定

④実行 

この4つだ。(こういう時、①が「現状の理解」になってないのってすごく気持ち悪くないですか)小言はさておき、この流れを頭に入れておくだけでも問題解決の効率は一気に上がると思う。ある課題に対し闇雲にトライ&エラーを繰り返すより、4つのステップに沿って解決を図った方が遥かに早く的確な対処ができるはずだ。

 また、各ステップにはそれぞれを助ける思考ツールが紹介される。1時限目では①(②)を行うためのツール「分解の木」が登場。これはある問題の要素を樹形図状に分解するものだ。大きな抽象的問題を分化させることで小さく具体的にし、現状を適切に把握したり原因を洗い出すことができる。

 

2時限目 問題の原因を見極め、打ち手を考える

 学生3ピースバンド「キノコLovers」の校内ライブ動員数を上げる、そんな物語とともに進む2つ目のパート。設定がめちゃくちゃ面白いし、彼らが出す施策に「え、それは無理あるんじゃない、」と思うこともしばしば。コミック的に楽しめる。

 ここでは②のためのツール「YES/NOの木」と、②(③)のためのツール「課題分析シートが紹介される。前者はいわゆるYES/NOチャートを原因特定に応用したもので、原理さえわかればとても簡単に使いこなせる。後者は分解されたいくつかの課題に対し、仮説・根拠・分析方法・情報源を表にしてまとめるもので、表で視覚化されると必要なことが整理されて良い。

 また、このパートでは「得意な人に手伝ってもらう」ことの良さも語られている。なんでも自分でやるのは効率が悪い上に手段が偏る。上手に他人を頼ることも必要な技術だと思う。モテる人って、人に頼るのが異常にうまかったりしませんか。

 

3時限目 目標を設定し、達成する方法を決める

 CGアニメーション映画監督になることを夢見るタロー君は、第一歩として中古パソコンを購入する目標を立てる。そのための資金はどう調達するのか。こんなストーリーとともに学ぶ3つめのパート。ほのぼのしていていい。

 ここではギャップ認識の重要性が説明される。「合格から逆算」というわけだ。目標と現状の距離感を適切に認識して初めて、効果的なギャップの埋め方がわかる。野菜の苗を植えるのにショベルカーはいらないし、電柱を埋めるのにスコップでは物足りない。必要な行動量を把握すれば、使う道具は自ずとわかるものだ。

 

おわりに

 本書は30分もあれば読めてしまうが、その割に書いてあることは本質の真芯をついている。ページ数と本質の捉え具合に相関はないか。