森の雑記

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後悔しないコツ 前向きに生きる

後悔しないコツ

前向きに生きる

 

はじめに

 これまで生きてきて、一度も後悔をしたことがない人はごく稀だろう。何らかの選択を悔いることは誰しもが経験することだし、そのたびに、「あの時に戻れたら」と後ろ向きな思いをはせる。しかし、後悔先に立たず。クヨクヨせず、前向きに生きていこうぜ、という結論に達することもまた、人類に共通する姿勢だ。

 この本は、そんな後悔を可能な限り小さくし、前向きに生きる心持を作るノウハウを示したものである。

 

全体をみて

 本書では、各章のテーマに沿い、説話や具体例、偉人伝などがエッセイ形式で語られていく。各エッセイは見開き2pの単発物で、それらが緩やかにつながりを持つことで章が形成される。非常に読みやすい。

 しかし、一文ごとされる過剰な改行、後半畳みかけるように出てくる仏教説話など、なんというか、いまいち没頭して読めないつくりにもなっている。そのため、お気に入りのエピソードをその都度見返すくらいが、本書の使い方としては良いと思われる。

 

1章 何事も「楽天的」に良い面を見ていく

 楽天的な人はバラを見て、トゲを見ない。悲観的な人は、トゲばかりじっと見つめて、美しいバラの花が咲いていることに気づかない。」カリール・ジブラーン

何事にも良い面と悪い面がある。後悔しないためにはいい面をとらえ、楽天的に生きるのがよい。という内容で引用された、レバノン出身の詩人の言葉。この言葉が言わんとしていることは他にもっとあるだろう、と思うし、悪い面をとらえて反省することも必要だと思う。けれど、この言葉は言いえて妙で美しいな、と感じた。

 

2章 「その時点では最善だった」と考えてみる

 「無駄遣い」ではなく「自分へのご褒美」と考える、という内容のエッセイが気に入った。高額の買い物をして後悔することはよくあるけれど、お金を使ってストレスを飛ばした、という意味では必要経費なのかもしれない。

 

3章 「やらない後悔」より「やった後悔」がいい

 これはもう読まずとも誰しもが感じているところだと思う。できない理由を見つけるのがうまい人は山ほどいるけど、できる工夫を考えられる人は少ない。

 

4章 自分らしく生きる人は、後悔しない

 「自我作古」(我より古を作す) 宋史

自分の過去は今の自分が作る。当たり前なんだけど、忘れがちなこと。ダイエットとかしてても、食べ過ぎを後悔することがあるけれど、食べたのは自分だよね、みたいな。こうした言葉が宋の時代からあることに感心。

 

5章 上手に開き直れる人は、後悔しない

 イソップ物語の「すっぱいブドウ」が引用される。一匹の狐が、手に入らなかったブドウを、「あれはきっとすっぱいからきっと取れても食べられない。」とあきらめる話。言い訳といえば言い訳だけど、こういうメンタリティが必要な場面もある。

 

6章 「今」という時間を大切にして生きていく

 「いつやるの? 今でしょ!

 

7章 嫌な出来事にも、「ありがたい」と感謝する

 ロダン相田みつを岡本太郎、批判を受けながらも突き抜けていった人は数多く存在する。自分にとって「嫌」な状況は、むしろチャンス。

 

8章 やるべきことに全力を尽くす

 「働き者の眠りは、心地いい」 旧約聖書 

全力で取り組んだら結果はどうあれ気持ちいい。

 

9章 人は何度でも、人生をやり直せる

 何かを始めるのに遅すぎることはない。これからの人生を考えると、最も早くスタートを切れるのは今しかない。

 

おわりに

 書いていて思ったけれど、この本、内容が薄いというか、文化的背景を考慮せずに説話を引っ張ってくるせいでいまいち共感できない。わかりきったことも多い。この人にしか書けない本でもなさそう。と、読んだことをすでに後悔しつつある。それでも、読まなかった後悔よりは、読んだ後悔のほうがいいと信じる。