森の雑記

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ZAIが作った「株」入門

ZAIが作った「株」入門

 

はじめに

 コロナウイルス対策として、いよいよ緊急事態宣言が発表されるようだ。日本の経済には大きな打撃となるだろう。投資家からみて、この状況は危機とも契機ともとれる。持っている株式の価格が大きく下落し、資産を減らす。しかし、優良銘柄の株価が下がっているため、買うには絶好のチャンス。こうした投資家目線で経済をみると、このご時世でも少し楽しめる。そんなことを教えてくれたのがこの本だった。

 

全体を通して

 株式、投資に関するあれこれが非常にわかりやすく、繰り返し丁寧に書かれている本書。6つの章立てで、投資初心者が知るべきことを簡潔に伝えてくれる。その分経済の知識が少しでもある人間にとっては、やや冗長に感じる部分もあるか。資産のために、将来のために何かをやってみたいが知識がない、という人にはもってこいな本だと思う。

 

1章 そもそも株って何?

 株とはなんぞや、ということを基礎の基礎から解説する章。配当、オーナー権、株主総会株主優待…このあたりのことが少しでもわかる人は読み飛ばしてもよさそうだ。テクニカルな話はほとんど出てこない。

 

2章 ネット証券で株を買おう

 この章で驚いたのは、ネット証券の口座開設手続きは非常に簡単だということ。各証券会社のHPで必要事項を入力し、書類が郵送されたら書き込んで返送。1,2週間後には口座開設のお知らせと必要な情報が届く。これほど簡単なら、「とりあえず口座だけでも、、」という気になる。

 株売買のしかたもこの章で解説され、「指値」「成行」などの専門用語も出始める。しかし、実際の証券会社のページや、図などがあるため、置いてけぼりにはされない。各証券会社の手数料、機能差などもまとめてくれている。

 

3章 いい株ってどんな株?

 ある企業が儲かっているかどうかは、とくに有名企業に関して、生活の中の肌感覚でなんとなくわかる。例えば今だと、マスクを生産する企業や、オンラインサービスを提供する企業などは、なんとなく儲かっていそうだな、と僕たちは感じる。

 しかしこれだけを株式を買う(=投資する)理由にしてはいけないそう。必ずその会社のHPなどから「IR情報」を覗き、「決算」における様々な数値を確認する必要がある。純利益はどのくらいか、自己資本比率は低すぎないか、予想業績の下方・上方修正はないか、などいくつかのメルクマールを見たうえでの判断が求められるのだ。

 と聞くと、何やらなんかいそうだが、この指標たちも見方さえ理解すればそれほど難しい数字ではない。英語の長文問題を解く前に、単語とイディオムを覚えるような感じだ。

 

4章 割安な株ってどんな株?

 この本につまづきポイントがあるとすればこの章。ここではPERとPBRという株価の適正さを評価するモノサシが説明される。これが少しだけわかりにくい。

 PER(Price Earnings Ratioの略)とは、株価(1株いくらか)を1株益(1株あたりどの程度の利益を出すか)で割った数字だ。(PER=株価÷1株益)当然このPERは、①割られる数である株価が安い、②割る数である1株益が高い、③あるいはその両方、の状況下で低い値が算出される。①の場合、安い株であるから買いやすいし、②ではその株を発行している企業が多くの利益を出しているため、優良企業である可能性が高い。つまり、PERが低ければ、その株式は「お買い得」になりやすい。

 このPERは標準値がおおよそ15であるため、これより低い値の株を見つけたら、割安だと思っていいだろう。様々な別の条件も加味しなければならないが。

 PBR(Price Book-value Ratioの略)とは株価を1株純資産(会社の資産を一株当たりいくらかに割り振った数字)で割った値だ。(PBR=株価÷1株純資産)資産には利益のほかにブランド価値や技術、ノウハウも加味されるので、普通株価より1株純資産は高くなる。(株価<1株純資産)そのため、まともな企業ならPBRは1より大きくなる。優良でありそうな企業のPBRが1を下回っていれば、株価が低めに見積もられている可能性が高いので、買いのチャンスというわけだ。

 と、このように、この章は数値的な話が多いため、少しだけ読みにくいかもしれない。しかし具体的な数字で計算式を説明してくれるため、割り算のルールさえ分かっていれば理解にそう時間はかからないだろう。

 

5章 株価チャートのテクニック

 株と言えばこれ。株価をグラフ上にしたチャートは誰しも一度は目にしたことがあるだろう。このチャートの見方と用語をレクチャーしてくれるのがこの章。言葉だけ説明しようとすると非常に長くなりそうなので省略するが、ローソク足、トレンド、移動平均線などグラフを見るうえで欠かせない用語が、ふんだんに図を使って解説される。

 

6章 儲けるための9の知恵

 はい出ました。よくある「〇つの~」。

 投資で儲かるための情報接取のしかた、マインドセットなどテクニックではない部分を教えてくれる章。

 実際投資を始めると、数学の答えのようにカチカチと決まった答えが出ることばかりではない。そのため、投資家心理や株式市場の大きな傾向もとらえていく必要があることを知らされる。そりゃそうだ。

 

おわりに

 株、投資、金儲け。こういった言葉に嫌悪感や疎外感を感じる人は一定数存在すると思うし、高校生までは僕もそうだった。老後2000万事件もそうだけど、これからの時代はお金の知識を持った人が得するのではなく、持ってない人が損するようになっていくはずだ。であれば、「〇つの~」でもなんでも目の前にある情報は獲得しておきたい。自分の株価を下げないためにも。