金持ち父さん 貧乏父さん インディアン・ギバーになる
金持ち父さん 貧乏父さん
インディアン・ギバーになる
はじめに
コロナウイルスの感染者数が日本国内で3000人を超えた。お金を持った人々が地方に避難しているという噂を友人から聞いた。生活に労働を必要とする僕たちは、都市部から逃げることもできず、満員電車に揺られる。お金に余裕があり、働かなくてもよければ、すぐにでも人が多く集まるところと無縁の暮らしがしたい。
と思いながら、部屋にこもっていたら、片隅に追いやっていた、父からの借り物であるこの本が目に入った。アルバイト先の塾は休まる気配がないが、大学はしばらく休みなので、暇を持て余しこうした本に興味が向く。
あらすじ
この本は前半「教えの書」、後半「実践の書」に分かれている。教えの書は、「金持ち父さん」こと友人マイクの父と、「貧乏父さん」である著者ロバート・キヨサキの実の父を対比しながら、物語形式で話が進む。そこには、金持ち父さんからの6つの教えが書かれる。そして、後半の実践の書は、著者から読む人へのアドバイスをまとめたものだ。ここでは教えを実践するためのアドバイスが大きく3つに分けて語られる。
感想と総評
この本には、株式を買うための具体的方法や会社経営のノウハウのことは書いてない。つまり、ビジネス指南書の類ではない。では何が伝えられるか。著者は私たちに、「金持ちのマインドセット」を教え込むのだ。技術的な面は他書にゆずり、(巻末にはファイナンシャル・インテリジェンスを高めるために、著者が勧める本がこれでもかと記されている。)金持ちに必要な考え方を物語を軸に発信する。
僕はこの本を読み、金持ちのマインドセットとは、「働いて金を稼ぐ」のではなく「金を働かせる」ことだと理解した。大きなお金を得るには、I work to make money 的発想でなく、I make money work の思考が必要なのだ。
気に入ったところ
① 恐怖は才能を萎縮させる(p149-)
投資や起業と聞くと、多くの人はなんとなく尻込みする。自分が未知、もしくは無知の世界に足を踏み入れることへの恐怖があるからだ。もしかしたらその道に関する大きな才能があるかもしれないのに。金に関することに限らず、結局自らの資質を発言させるトリガーは、度胸なのだと思わされた。
②能力の掛け算(p181-)
何かに一つに特化した人物はもちろん価値が高い。例えば弁護士、例えばものすごい作品を生み出す画家。しかし、彼らが大きなお金を必ず手にするかと言えば、そうとは限らないのが社会だ。むしろ、専門的能力がその道のトップの80%ほどだとしても、マーケティングの能力、コミュニケーションの能力などを合わせて持っていれば、双方の掛け算で、スペシャルワンになれる。「専門特化」は悪いことではないが、「複数優位」のほうがお金を稼ぐのにはいいのかもしれない。絵画の技術が際立っているわけではないが、その売り方、見せ方で世界的名声を持つバンクシーのような画家がいい例だ。
③インディアン・ギバー(p254-)
かつてアメリカに渡った入植者たち、厳しい冬を越す際、インディアンが彼らに毛布を手渡す。しばらくたったのち、インディアンは言った「毛布はいつ返してもらえるのか」。入植者たちは戸惑い、腹を立てた。
こんな昔ばなしから、あるモノを取り戻す人のことを「インディアン・ギバー」と呼ぶらしい。金持ちになるには、投資のために手放したお金を速やかに回収する、インディアン・ギバーを目指す必要がある。give の動詞を使いながら、取り戻す人という訳が当てはまるあたり、お金を与える(投資する)のは取り戻すためと考える思考に、この「インディアン・ギバー」という言葉はぴったりな気がする。
④アメリカンジョークたち
カーネル・サンダースは66歳の時、事業に失敗し、生活保護を受けるまでになった。しかし、そこで弱気にならず、フライドチキンの製法を売り込んだ。それも千回以上。ようやく買ってもらえたその製法が、その後どう発展したかは言うまでもない。事業に失敗し、普通なら自らの能力を疑い、臆病になるような場面で、彼は心の中の「チキン・リトル」をから揚げにして売ってしまったのだ!
この本には、思わずニヤリとさせられる、こんな言い回しが所々に出てくる。
おわりに
まだ学生の身分だが、このタイミングでこの本に出会えたことは、僕にとって非常に幸運なことだ。コロナウイルスで自粛ムードが広がり、株式市場があれている今はむしろチャンスかもしれない。新しい挑戦を恐れず、早いうちに何か始めてみよう。その前に、この本を父に返そう。父がインディアン・ギバーになる前に。