森の雑記

本・映画・音楽の感想

新書

南方熊楠 人魚の話

南方熊楠 人魚の話 はじめに 南方熊楠をご存知だろうか。高校倫理や日本史の授業で彼を知った人も多いかもしれない。僕も高校時代に倫理の授業で彼についてほんの少し勉強した。神社合祀に反対したこと、粘菌に詳しい民族学者だったこと、昭和天皇に標本を手…

『広辞苑』をよむ

『広辞苑』をよむ はじめに 中学校3年生のときに電子辞書を買ってもらった。この小さな機械はなかなかの優れものである。英和辞典はもちろん、世界史の一問一答、TOEIC模擬テストなど、実に多くのテキストが内蔵されており、一台持っていれば大抵の学習はで…

新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方

新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方 はじめに 先日「AI時代の憲法論」を読んだ際に初めて知った佐藤優さんと、お馴染み池上彰さんの対談を文春新書から発行したのが本書。発行は「新・戦争論」「AI時代の憲法論」の順だが、僕は時系列に逆らう形で本…

医者と患者のコミュニケーション論

医者と患者のコミュニケーション論 はじめに 人間はコミュニケーション能力を求めている。就職活動の面接、友達作り、飲み会…多くの場面で円滑にコミュニケーションが行えれば、人間関係は良好になる可能性が高いからである。そのせいだろうか、巷にはコミュ…

新 移民時代

新 移民時代 はじめに 北朝鮮が2018年に設置された南北共同事務所を爆破し、カシミール地方では中印両軍の武力衝突により、少なくとも3人が命を落とした。新型コロナウイルスの流行も手伝ったのだろうか、国際的な秩序には、各地で明確な歪みが生じている。…

面白いけど笑えない中国の話

面白いけど笑えない中国の話 はじめに 武漢発と言われることの多い新型コロナウイルスが世界を席巻してから、もう半年がたとうとしている。感染拡大の責任を声高に追求する米国でなくとも、武漢だけでなく、中国全土の公衆衛生状況が危ういことは多くの国が…

男尊女卑という病 

男尊女卑という病 はじめに 「プラスサイズモデル」としてご活躍されている、藤井美穂さんをご存知だろうか。僕は初めて彼女の活動を知ったときに、自分に自信を持ち、自分らしさを表現し続ける生活を送る彼女を、心底尊敬した。世間が作る「理想」より自分…

サルが食いかけでエサを捨てる理由

サルが食いかけでエサを捨てる理由 ヒトと動物は異なるか はじめに タイトルを読むだけで果物を持ってさまようサルが想像できてしまう。ちくまプリマー新書から発行された本書は、同レーベルの他本と同様に「クラフト・エヴィング商會」が装幀を手掛けており…

日本人と象徴天皇 昭和から平成、令和へ

日本人と象徴天皇 昭和から平成、令和へ はじめに 天皇に関する言論には、しばしば大きな賛否がつきまとう。僕はその是非や制度の背景などに明るくないので、いまだ自らの立場を明確にできない。それでもこの制度、「象徴」天皇制について少しでも多くのこと…

世界は宗教で動いてる

世界は宗教で動いてる はじめに 自分が息をひきとる時を考えると、多くの日本人は同時にお葬式のことを思い浮かべるのではないだろうか。そして葬儀について、大多数の人が仏教式のお経やご焼香を伴うものを想像する。だが、その宗派は?と聞かれると、答え…

東大のディープな日本史 暗記は解釈に勝てない

東大のディープな日本史 暗記は解釈に勝てない はじめに 受験戦争という言葉が使われるようになってから久しい昨今、日本においてその頂点に立つのが東京大学であることに異論を唱える人はあまり多くない。本気で受験勉強に取り組んだことのある人なら、一度…

ジャーナリズムの可能性 批判的であれ

ジャーナリズムの可能性 批判的であれ はじめに ブックオフに立ち寄って本を物色していたところ出会ったこの本。自分のこれからを考えるうえで読んだほうがいいかな、と思い購入した。原寿雄さんが岩波新書から出版したものだ。岩波新書と言えば、最近は「独…

大人のためのホテルの使い方

大人のためのホテルの使い方 はじめに 「大人のためのホテル」と聞くとなにやらいかがわしい本なのか、と邪推してしまうが、本書はシティホテルやリゾートホテルなど、ややハードルが高いホテルから、通常のビジネスホテルの快適な利用法を伝授するものであ…

ケーキの切れない非行少年たち 見「られ」ない子供

ケーキの切れない非行少年たち 見「られ」ない子供 はじめに 2020年の新書大賞で、あの「独ソ戦」に次いで2位にランクインした本書。ここ最近ビジネス書を読むことが多かったので、新書が恋しくなり、なにやら目を引く図を見て購入を決定。非行少年と聞くと…